料理人の離職率が高いって聞いたけどなんでだろう?
このような疑問にお答えします。
「料理人」は、離職率が高い職業として有名です。過去の統計データをみても、飲食業界の離職率が高いのは明らかです。
高校・大学の新卒就職者を対象とした産業別の調査によると、「宿泊業・飲食サービス業」がもっとも離職率が高いです。就職から3年以内に離職した割合は、高卒は61.1%、大卒は51.1%となっています(令和2年度)。
上記のデータは令和2年度が対象ですが、過去をさかのぼっても飲食業界の離職率は高いです。実は、料理人の離職率が高いのには明確な理由があります。
この記事では、料理人の離職率が高い現状と、3つの理由を紹介します。記事を読めば、料理人として働き続けるための心構えができます。
料理人の離職率が高い理由① 身体的にキツい
料理人の仕事は身体的にキツいです。耐えきれずに退職する人が多いので、離職率が高いのです。
料理人にとっての身体的なキツさを3つ紹介します。
修行期間が長いのがキツい
料理人は修行期間が長いです。見習いとして修行しても、一人前になる前に退職してしまう人が多いです。
料理人の仕事は「10年の修行で1人前」と言われています。雑用から徐々にステップアップしていき、1人前の料理人になるまでに10年かかるということです。
高卒や大卒から10年勤務すると、20代後半〜30代前半になっているでしょう。業務に慣れていきますが、年数を重ねるごとに身体への疲労も増えます。身体的なキツさは増していきます。
毎日の長時間労働がキツい
料理人という仕事の特徴として、長時間労働が挙げられます。毎日朝早くから夜遅くまで勤務する飲食店が多いです。
食材を市場で仕入れているなら、早朝から仕事を開始します。夜は営業終了後の片付けがあるので、22時を過ぎるでしょう。
時間帯 | 仕事内容 |
---|---|
6:00 〜 | 市場へ仕入れ |
9:00 〜 | 出勤し仕込み |
11:00 〜 | 昼の営業 |
14:30 〜 | 仕込み&休憩 |
17:00 〜 | 夜の営業 |
22:00 〜 | 片付け |
23:00 〜 | 帰宅 |
実際に僕が勤務していた東京の寿司屋の1日のスケジュールです。
上記のスケジュールでわかるとおり、1日の勤務時間は長いです。休憩があっても、1日17時間ほど拘束されています。
プライベートな時間を確保するのが困難です。長時間労働に耐えきれずに退職する料理人は多いです。
休みが少なさがキツい
料理人は休みが少ないです。一般的な企業で採用されている「週休2日」を採用している飲食店はほとんどありません。
ホテル調理や大手チェーン店の一部では、シフト制でまわすことで週休2日を導入しています。個人店や中小規模の飲食店では、週休2日は期待できません。
飲食店はお客様にとっての休日(土日・祝)が稼ぎどきです。平日に休みを取るとしても、週1回の飲食店ばかりです。
市場から食材を仕入れている飲食店なら、日曜休みもあり得ます。日曜は市場が休みだからです。
高級寿司屋に勤務していたときは日曜定休でしたよ。
料理人の離職率が高い理由② 精神的にキツい
勤務し続けているうちに、精神的にキツくなって退職する料理人も多いです。料理人ならではの精神的なダメージを紹介します。
先輩からのパワハラがキツい
ドラマや漫画の影響で「料理人=パワハラがキツい」というイメージを持っている方も多いでしょう。実際の飲食店をみてみると、パワハラは存在します。
これまで5つの飲食店で勤務しましたが、うち4店舗でパワハラがありました。僕の体験でいえば80%の飲食店でパワハラが存在することになります。
※僕がパワハラを受けた割合ではなく、職場としてパワハラがあった割合です。
ひとことで ”パワハラ” と言っても、被害の大きさはそれぞれです。指導の範囲を超えた ”嫌がらせ” が目立ちます。
パワハラ被害ははじめは小さくても、どんどん大きくなります。被害を受け続けているうちに、精神的にキツくて退職する料理人は多いです。
他の職業が羨ましく感じる
他の職業をしている人が羨ましくなって退職する料理人もいます。おそらく、料理人なら誰でも一度は体験したことがあるはずです。
- 土日や祝日に休める
- 定時(17時 or 18時)で帰宅できる
- 帰宅後に趣味やデートをする時間がある
飲食業をしていると、上記の生活はできません。仕事が終わったら1日が終わります。
若くて体力があれば、遅くからでも遊びに出かけたり、思いっきり趣味を楽しめるでしょう。ところが体力がなくなると、仕事後は ”早く帰って寝たい” となってしまいます。
経験を積んで管理職になると、ますます帰りが遅くなりがちです。そんなときに他の職業が羨ましく感じてしまいます。
料理人の仕事を楽しんだり、目標をしっかり持っていないと、継続するのは難しいです。
家族や友人と休みのタイミングが合わない
料理人をしていると、身近な人と休みのタイミングを合わせるのが難しいです。休日に誰かと出かけるのが難しいと、仕事への気持ちが切れて離職につながります。
- 土日や祝日に休めない
- 有給休暇が取りにくい
- 平日休みが合う友人が少ない
いつも休みのタイミングが合わないと、誘われる回数も減ります。そのうち孤独を感じることもあるでしょう。
とはいえ、同僚や他店の料理人とは休みを合わせやすいです。同業の友人をつくると、孤独を感じにくくなります。
料理人の離職率が高い理由③ 労働条件がキツい
料理人の離職率が高い理由は、労働条件がキツいことです。飲食業界によくある、キツい労働条件を3つ紹介します。
見習いの給料が低い
見習い料理人は給料が低いです。朝早くから夜遅くまで働いても、月給16万円〜18万円の見習い料理人はたくさんいます。
未経験だと、正社員ではなくアルバイトからスタートすることもあります。アルバイトだと時給制なので、給料はさらに低いです。
見習い期間は「仕事を教えてもらっている」立場です。教えてもらいながら給料がもらえることをポジティブに考えるとよいでしょう。
料理人の給料をあげるなら、経験を積んで技術を磨くのが近道です。
昇給の条件が不明確な飲食店が多い
昇給の条件やタイミングがハッキリしない飲食店は多いです。勤務し続けているのに昇給できないと、モチベーションを保てずに挫折するからです。
昇給の条件が明確なら、頑張る目標になります。給料があがるのは仕事を認められた証拠です。
- 勤続年数ごとに昇給
- 〇〇の仕事を覚えたら昇給
- 後輩ができて仕事を引き継いだら昇給
昇給の条件としては上記があげられます。可能なら就職前に条件を確認しておくとよいでしょう。
低賃金で働き続けると、どうしても不満が溜まります。料理人として働き続けるなら、昇給は重要です。
料理人の離職率を下げるための対策
料理人の離職率を下げるのは、飲食業界全体で考えるべきことです。
ここでは、料理人として勤務する人と、飲食店の責任者が行うべき対策をそれぞれ紹介します。
料理人は飲食業界のリアルな状況を知っておく
料理人として働くなら、飲食業界のリアルな現状を知っておきましょう。飲食業界の状況を把握していれば、しっかりと心構えができます。
高校・大学の新卒就職者を対象とした産業別の調査によると、「宿泊業・飲食サービス業」がもっとも離職率が高いです。就職から3年以内に離職した割合は、高卒は61.1%、大卒は51.1%となっています(令和2年度)。
上記はこの記事の冒頭でもお伝えした離職状況です。学歴に関係なく、3年以上続けられる人は全体の50%未満とわかります。
離職率が高いことを知っていれば、同僚が退職しても「飲食業界ってこんなもんだろう」となります。事前に知っていればショックを抑えられます。
離職率以外にも、平均賃金や独立開業したときの年収など、事前に情報を得ることは重要です。
飲食店は業務体制を工夫する
離職率を下げるために飲食店側ができることは、業務体制を工夫することです。工夫することはたくさんありますが、優先して取り組んでほしいのは下記の3つです。
- 従業員同士のコミュニケーションを増やす
- 人手不足を解消する
- 残業を抑える
歓迎会や宴会など、従業員同士のコミュニケーションを増やせば、人間関係が良くなります。人間関係が良い飲食店は、仕事が楽しくなるので離職率を減らせます。
人手不足はすぐに解決するのは難しいですが、絶対に取り組むことをおすすめします。人手不足になると、一人ひとりの負担が増すので大変です。
1日の仕事内容を整理して計画を立てると、残業を抑えることも可能です。無駄な時間を省くために、仕事を整理してみてください。
料理人の離職率が高い理由を知ることで覚悟を持とう!
- 料理人の離職率はずっと高い
- 料理人を目指すなら覚悟が必要
- 飲食店側は業務体制の改善が必須
この記事では、料理人の離職率が高い理由を3つ紹介しました。結論としては、身体的・精神的・労働条件がキツいことが原因です。
料理人の離職率は今だけでなく、昔からずっと高いです。待遇や労働環境が改善されている飲食店もありますが、実際はまだまだ厳しい飲食店がほとんど。
あなたが料理人を続けたいなら、飲食業界の状況を把握して心構えを持ちましょう。心構えがあるだけで、乗り越えられるキツさは結構あります。
とはいえ、条件のよい飲食店も存在します。飲食店選びに失敗したくないなら、転職エージェントを利用するのがおすすめです。
下記の記事では、飲食店に特化した転職エージェント「フーズラボ」の評判や口コミをまとめています。飲食店選びに失敗したくないなら、ぜひチェックしてください。
飲食店専門だから安心!